去る12月14日、第27回全日本スポーツダイビング室内選手権大会が、令和元年以来実に5年ぶりに開催されました。今回より主催者が(財)日本海洋レジャー安全・振興協会催に変わり、会場もこれまでの千葉国際水泳場から、なんとあのオリンピックレガシーの東京アクアティクスセンターになりました。
この大会は、1970年代からJUDFが開催していた「全日本水中スポーツ選手権」を前身にした競技会で、コロナ禍や東京オリンピックの影響で何年も中断していましたので、もうこのまま無くなるかもしれない、と寂しく思っていましたので、今回の開催の報せは大変嬉しく思いました。
大会には北は秋田から西は香川まで、36チーム216名のダイバーがエントリーしました。JUDFでは今回の記念すべき大会に、メルマガなどでスタッフだけでなく選手としての参加も呼びかけ、JUDFチームを編成し出場しました。私は今回この大会にスタッフ兼選手としてエントリーさせていただきましたので、結果をご報告いたします。
まるで大伽藍を模したような巨大な入母屋屋根が特徴的な東京アクアティクスセンターですが、習志野の千葉国際水泳場と比べると1.5倍くらいに広がったでしょうか。入り口を間違えると結構な距離を歩かなくてはいけません。前日からスタッフとして準備に入りましたが、プールの長手方向にも観客席があるのとメインプールと飛び込みプールとの間隔も広くなっていて、縦方向を遠望すると白いLED照明の効果も相まって、反対側が霞むように思えました。
今回JUDFは、計24名のスタッフを派遣し、主に選手招集と誘導、潜泳器材の準備などを担当しました。多少の変更点はありましたが、選手招集からスタートまでの流れは以前とほぼ同様でしたので、円滑に競技を進行することができました。
大変だったのは第一招集係の学生さんで、招集がかかっても選手がなかなか集まらない場合、観客席(選手の控席)や更衣室まで走らないといけないことで、ここは以前の会場とは大きく距離が伸びた点でした。このあたりの招集方法については来年以降改善したいと思います。
さて、選手としてはどうだったのでしょうか?実は私は、今まで少し不思議な気持ちでこの大会に携わってきました。ダイビングは海という自然の中で楽しむスポーツなのに、完全に自然から閉ざされた室内空間で競技を行う意味がよく理解できなかったのです。全国各地から普段ダイビングを楽しんでいるような社会人や高校生、大学生の精鋭ダイバーが一堂に会し和気あいあいと競技を楽しんでいるのです。一体何が面白いのか、一度出場してみたいという気持ちで何年も過ごしていました。今回JUDFでチーム編成をすることになり、選手募集の声がかかった時には、真っ先に手を挙げてエントリーさせていただきました。
畏れ多くもオリンピックレガシーのプールで初めての開催ですから、あれこれ戸惑いながら準備を進めて、いつの間にか開会式が進んでいきます。
ミス日本「水の天使」安井南さんが大会アンバサダーとして華を添えてくださいます。安井さんはずっと薄着で座っていましたけど寒くはなかったでしょうか。さすがミス日本!根性が選手並みに座っていたようです。
さて、開会式後もスタッフとしての役割を務めつつプログラムは進んでいき、ウオーミングアップもできないうちに、あれよあれよと私の出場する組が招集される時間が来てしまいました。
招集を受けてスタンバイすると、第一招集4列、第二招集3列、スタート前3列と、実に計10列の椅子を順に移動していきます。この待機時間は長すぎじゃないか?と内心思っていましたが、スタートのイメージトレーニングやレギュレーションの確認など、この時間が競技に集中するのに大変役立ちました。傍から見ると長く待機させ過ぎかとも思われますが、そんなことはありませんでした。
いよいよフィンを履きプールに入りスタート姿勢をとります。耳を澄まして、少し頼りない電子音の笛を聞いて飛びだします。泳げ!泳げ!フィンワークはこれでいいのか?泳げっ!あれっ?50mってこんなに長かったっけ?左を見ると誰も見えない、思ったよりも速い?この気持ちで少し気が抜けました。
ゴールすると、結果は8人中4位!5番レーンの私は、左のレーン4人よりは速かったですが、右のレーン3人よりは遅かったのでした!(残念)
結果は、JUDFチーム4人のうち50代3人の出場者が50~59歳の年代別で3~6位に入賞し、根本様は銅メダルの快挙でした。20代の学生さんも激戦区の中総合9位と善戦しました。私はJUDFチームでは一番遅く、それでも年代別6位で賞状をいただきました。3位との差はわずか0.9秒!これを知って悔しさがこみ上げてきました。来年は2秒早く泳ぎたい!来年も必ず出場したい!2週間たった今でも、少し悔しく思いだされます。
それにしても、高校時代のようなこんな気持ちになれたのは何十年ぶりでしょうか?競技に対する緊張感と充実感と悔しさ、50歳を過ぎてもダイビングを通してこんな気分が味わうことができ、本当に楽しかったです。選手として出場して初めて、室内競技大会の素晴らしさがよく理解できました。
改めて、主催者を初め運営スタッフの皆様にはこの場をお借りして感謝の意を申し上げます。
今回の大会開催にあたり、主催者が変わり会場も変わり、関係者皆さまのご苦労は並みならぬものがあったと耳にしています。
来年以降も続けられるよう、皆様のご協力をお願いし、本稿を結びます。
E-381 田村日出幸