2021年7月31日(土)・8月1日(日)、読売テレビ放送株式会社による 「第43回鳥人間コンテスト2021」 (略称 鳥コン)が、滋賀県彦根市の琵琶湖東岸で開催されました。
例年ですと、たくさんの観客の声援を受けながらの賑やかで華々しいイベントになるところですが、今年は今般の新型感染症の流行を鑑み、無観客開催による番組収録として実施されましたが、昨年のように中止にならず、実施されただけでも喜ばしく、JUDFとしても張り切って、例年同様にレスキュー活動に参加させていただきました。
鳥コンでは、滑空機部門と人力プロペラ機部門があり、高さ10mのプラットホームからびわ湖に向かって飛び出し、飛行継続距離を競って滑空/飛行して、最後は湖水に着水します。
JUDFダイバーのレスキューサポートは、この着水した機体の中から疲労困憊したパイロットを救出し無事ボート上に引き上げる仕事や、大切な機体を回収し引き上げる、重要な役割です。JUDFでは前日の7月29日よりレスキューのリハーサルと準備、打ち合わせを綿密に行い、収録当日を迎えました。
今回も初めてレスキューサポートに参加してもらったボランティアダイバーの方から感想のレポートをいただきましたのでご紹介します。
「思い出に残る 鳥人間コンテスト」
今回、鳥人間コンテストのレスキュー班に初めて参加させていただきました。この企画は以前よりテレビで見ていたので、お誘いいただいた時には、「ぜひ体験してみたい!」と思って参加を決めました。
私の担当は、着水した人力飛行機の機体回収がメインでした。飛行機が着水したらすぐにパイロットの救助と機体の回収ができるように、飛んでいる飛行機をボートなどで追いかけるのですが、その時のボートのスピードがとても速くて最初は自分の荷物が落ちないか不安になるくらいでした。
また何より、滑空や人力だけの飛行機が、こんなにも速く飛ぶということにとても驚きました。
着水した機体を岸まで運ぶのも、ボートに乗せるパワーとバランスが必要で難しかったですが、レスキュー班のベテランの方が慣れた手つきで運ぶのを見て勉強になりました。
今回1番思い出に残ったのは、最後の飛行機がコースを往復し、ゴールまで帰ってきた時です。
その時私はジェットスキーの後ろに乗せてもらっていて、飛行機を追いかけて琵琶湖を往復しました。そんなにも長い距離をジェットスキーに乗せてもらうということも初めてでしたし、天気も良く空も水面もとても綺麗で、本当に気持ち良かったです。
風に逆らって飛ぶ飛行機を、ドキドキしながらゴールまで追いかけたことも、テレビで見た光景がまさに今、目の前にある!という感じでとても興奮しました。
(松本幸果さま)
「レスキューを再認識した鳥人間コンテスト」
今回の鳥人間コンテストのレスキュー活動に参加するという貴重な経験は、自分の水域での活動について改めて考える良いきっかけとなりました。
レスキューとは、溺者や要救助者に対する必要不可欠な活動で、ダイビングを楽しむ一人の人間としていつでも確実に行えるべきスキルだと思います。
しかし、今回の鳥人間コンテストに参加することで、パイロットを救助するだけがレスキューではなく、出場者の想いが詰まった機体を回収して返すことも同じ様に大切であり、レスキューという行為が人命だけでなく、大切なものに対しても行われるということを学びました。
また、レスキューを行う上で、声かけや要救助者の安心につながる行為が重要ということは日々の講習や練習の中で心に刻んでいることですが、今回の実体験で、さっきまで空を飛んでいたパイロットや水に慣れていないパイロットが機体から脱出する様子を目の当たりに見て、今一度、要救助者が本当に安心できるように自分のレスキュースキルを磨くこと、落ち着いて手際のよい行動をすることの必要性を認識しました。
現在はコロナ渦でダイビングや水域で活動する機会が少なくなっていますが、スキル練習の場だけでなく、遊びとしての活動の際にも、レスキューや自分のスキルが最大限使えるように意識しながら行動したいと再認識させられました。
(上田智貴さま)
「鳥コンレスキューに学ぶ」
去る7月末、鳥人間コンテストのレスキュー支援に参加してきました。
JUDFでは毎年恒例の支援事業となっており、これまで参加したいと思えども都合がつかず、今回はようやく念願かなっての参加となりました。間近で見る人力飛行機の迫力や感動を密かに楽しみにしてもいました。
鳥コン開催の当日、琵琶湖の天気は日差しが痛いほどの快晴。風もほどほどに落ち着いており、絶好のフライト日和ともいえるようでした。
しかし飛び立つ飛行機を前にすると、自分が実際に感じていたのは想像以上の緊張と不安でした。
自分の主な担当は、飛行機が着水した後、水上オートバイから湖に飛び込んでパイロットを救助する、というものでした。
おかしな言い方かもしれませんが、まさに本当のレスキューなのでした。
これまでの20年くらいのダイビング経験で、レスキュートレーニングこそこなしてはきましたが、幸いにも実際の救助活動に直面したことは一度もありません。
今回のレスキューにおいては、飛行機着水時のパイロットの行動、救助人員の配置や行動などきわめて高いレベルで安全が確保された状態での実施でしたが、いざ着水した機体を目前にしてみると全身に緊張が走りました。水面に出たヘルメットでパイロットの無事を確認できたときはほんの一瞬安堵しましたが、すかさず浮力体であるレスキューチューブを身に着けさせます。
中には、水面にパイロットがいない!
水中を覗いてみる。
機体の中で必死にもがくパイロットを発見!
潜り込んでパイロットを引っ張り出し救出。
といったような場面もあり、自分は20数機のフライトのうち半数ほどのレスキューを担当しましたが、毎回同じスタイルでのレスキューとはならず、都度瞬時に状況判断をし行動しなければいけません。
フライトの度、緊張と不安に身を包まれ、水上オートバイのドライバーである山本さん(現副理事長)の「行って!」という指示すらまるで悪魔の声にも聞こえていたような心持ちでした。それくらい緊迫感のある瞬間で、フライトした飛行機を観賞するなどの余裕はほとんどありませんでした。
最も長時間に及んだ最後のフライトも無事終わり、事故者を一人も出すことがなかったのが心の底から良かったと感じ安堵しました。
自分はこのレスキューの経験を通じ、非常に多くのことを学び実感しました。
その一つは、水面での事故などにあっては、浮力の確保がもっとも大事であることです。落水が予定調和であっても、パイロットに水泳の能力があっても、実際にはパニックになったり溺れたりするというのを目の当たりにしたからです。
また、要救助者(溺者)から常に目を離さないことも重要です。一瞬で状況は変化するので常に適切な行動がとれるようにしておかなければなりません。
そしてなにより、ある程度の安全が確保された中でのレスキュー実践ができたことは非常に貴重な経験でした。
意外にも自身の未熟さを知り、今後のダイビング活動にも活かせるよう安全意識を新たにしたいと痛感しました。
実際の事故はいつ起こるかわかりません。万が一の時に適切な対処ができるようにしておくことも必要ですし、
そもそも事故が起こらないように予めきちんと対策しておくことが最重要であると再認識しました。
まだ他にも得られたことは沢山ありますが、JUDFの一理事としてもこれらの経験を踏まえ今後も安全潜水の啓蒙啓発に努めていきたいと思います。
それから、琵琶湖の大空を駆けた数々の人力飛行機の雄大さと、目の前にある興奮をまざまざと思い出し味わったのは、湖面にたたずみ解体を待つばかりのプラットフォームを眺めていた帰り際なのでした。
(E-373 田嶋 一樹)
この企画は来年度も予定されますし、レスキュー隊にはJUDFメンバーなら参加が可能です!
詳しい日程等はJUDF総会の年間計画でお知らせできると思います。
興味のある方はふるってご参加ください。